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 君を好きだと言ったなら、


 鳴海歩はブレード・チルドレンの希望だった。(アイズはそれがいつか潰える幻で、ただ絶望を打ち消すための駒でしかないと知っていたけれど)
 鳴海歩は神の弟だった。(天使の指先とはよく言ったもので、その音色は兄をベースに創り出された贋作にしかすぎなかった)
 鳴海歩は、鳴海歩は、鳴海歩は……

 ただ一人の同胞を犠牲にして、自分の寿命を見据えて、全ての拠り所を失って、なお神たる兄を手にかけることなく立っていた。
 ひとりきりで立っている生きているその姿こそが、絶望を切り拓く実例なのだと、ブレード・チルドレンに背を向けて。
 仲間たちの期待で、懇願で、そしてアイズの諦念で、鳴海歩は「希望」になることに決めた。


 深淵の孤独こそが彼を「希望」たらしめている。だからもう二度と、心も存在も、何もかも鳴海歩には届かない。届かないことに気付いて、手を伸ばしたかったと知った。だけども遅い。現実は諦めの一つとして降り積もり、だけど、と今更ながらに思う。

 彼が選んでしまう前に、もしも────────なら。
 この手を取ってくれたのだろうか。


(今はもう、未来を夢見ることを取り戻してくれたひとを、のぞむことさえ出来ないけれど)

(18.05.27)


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